※当該記事は2023年3月頃に作成したもので、ベンチマークテストやStable Diffusionのテストなどは其の頃に行っています。そのため、現在の実情にそぐわない可能性もあります。大変申し訳ございません。
この度GEEKOM様より提供をいただき、GEEKOM A7を実機レビューします。
GEEKOM A7は7940HSや7840HSをCPUに搭載し、DDR5の32GBメモリやUSB4を搭載した112.4×112.4×37mmのミニPCの中でも比較的小型な部類のミニPCです。
実際に使ってみた感想としてはコンパクトな筐体なのに予想以上にCPUのパワーを引き出し、さらに高負荷時でも90度程度までCPU温度を抑え込めていると思います。
これまでのGEEKOMのミニPCの中でも最も選択肢になれる製品だと思います。
今回は非常に筆者個人として興味深い実験をします、それは内蔵グラボでStable Diffusionを回したらどれだけ早く回せるのか?という実験です。
Stable Diffusionは発表当初からいろいろな工夫によってどんどんハードルが下がってきています。
DirectMLを使えばなんとかCPUと内蔵グラボでも回すことが可能です。また、RTX2060 VRAM6GBでも生成するだけならなんとか鳴ります。
逆に、最新CPUの内蔵グラボの性能はどんどん上がっており、7940HSはGTX1650に肉薄する性能らしいのです。
であれば、はたして今回のではどれくらいの速度で回すことができるのか?それを検証していきます。
検証したところ、予想外のスコアが出ました。最低限これぐらいは出るだろうと思ってたラインをわずかに下回るぐらいです。
それはそれとして、今回は7940HSモデルを提供いただきましたが、7840HSモデルも良さそうですね。
7940HSモデル用のセール情報を頂いております。
Amazonではコード 8BEOHLBAを使うことで3000円オフとのことです。
また、GEEKOM公式サイトのストアではshigedosicksa7を使うことで3000円OFFです。
簡易スペック表
ミニPC名 | A7 |
メーカー名 | GEEKOM |
CPU | Ryzen9-7940HS |
DGPU | なし |
メモリ | DDR5 32GB |
ストレージ | SSD 2TB |
特記事項 | |
WIFI | Wifi6E対応 |
2.5GBE | 搭載 |
USB4 | 搭載 |
使用感
ライセンスについて
初回セットアップ中と初回セットアップ直後にslmgr/dliでライセンスを確認したところ、どちらもOEMライセンスであることを確認できました。
外観
かなりコンパクトに仕上がっています。
サイズ感
かなりコンパクトです。
デザインとしてはM1 Mac miniにかなり近いのですが、M1 Mac miniが約20cm(約197mm)四方で高さ3.6mmなのに対し、GEEKOM A7は112.4mm四方に高さ37mmとなっていて、かなりコンパクトに仕上がっています
また、GEEKOM A7は電源を内蔵しておらず、PD給電での起動にも対応していないため、付属のACアダプタを使わないといけないのですが、この電源アダプタも従来のGEEKOMのミニPCのそれとくらべてかなりコンパクトになっています。
ちなみに電源アダプタにはPSEマークの記載があります。また、付属の電源ケーブルはこんな感じなので変換プラグなどが必要かもしれません。
USB4端子の挙動について
今回A7のレビューをするにあたり、IT13とUSB4で直結してデータを転送しようとしました。
マイクロソフトのサイトにもできる旨が記載されていて、実際IT11とIT13を直結した際には高速データ通信が可能だったのでIT13とGEEKOM A7でも試してみました。
試してみたところタスクマネージャーに表示されなかったため、おそらく認識していないようです。
ある情報によればAMDのPCとIntelのPCとではこの通信ができないらしいようです。
非常に残念ですがUSB4にくらべればかなり遅い2.5GBEでデータを転送せざるを得ませんでした。
挙動について
FFXVベンチマークを回した後にブルスクからの再起動となりました。
また、ComfyUIで画像生成していたら3分ほど画面がフリーズしました。
それ以外には特に問題の有りそうな挙動はありませんで得した。
強いて言うならStable Diffusionをぶん回す際にメモリ不足で画面が暗転することが多々ありましたが、普通の動作ではそんなことにはならないと思います。
デフォルトでBitlockerが有効に。
なぜか初期状態ではBitlockerが有効になっていました。
ブルスクがよく連発されているのもここが原因かもしれないと思い、解除してみることに。
OBSの動作について
筆者は最近Youtuberに挑戦中でして、その収録や編集にGEEKOM A7を使用しています。
画面にNotionやObsidianで作成した資料やカンペをもとに喋っていく方式で、其の際にOBSを使っているのですが、ちらつきやブロックノイズ、収録の停止などが頻発しました。
最終的には画面ビットレートを上げてブロックノイズを解消しました。
その他の減少については、7940HSの内蔵グラボのRadeon 780Mが問題らしく、OBSをOpenGLで動かすように設定したらちらつきや収録停止はなくなりました。
Firefox等におけるTwitterのちらつきについて
筆者は最近ブラウザはFirefoxの素晴らしさに気づき、WindowsのデフォルトブラウザはすべてFirefoxにしているのですが、Twitterを見ているとFirefoxのウィンドウが全体的に真っ白になる現象が発生しました。
これも780M特有の現象らしく、Firefoxのパフォーマンス優先設定的な設定をオフにして、レジストリエディタをいじったら改善しました。
DaVinci Resolve(無料版)での編集について
筆者は最近Youtuberに挑戦中でして、其の収録や編集にGEEKOM A7を以下略。
動画編集ソフトにはDaVinci Resolveの無料版を使用しています。
30FPS1920*1080のMKVを編集する使用感については以下のようになっています
- プレビューをそのまま倍速にするとCPU使用率が100%になることもあるので、最適化メディアやプレビュー解像度を下げることを駆使しています。
- DaVinci Resolve無料版では動画のエンコードにCPUを使う場合が多いようです。其のような場合などCPUがフル稼働してもそこまで音は大きくなりません。
各種ベンチマーク
各種ベンチマークを取りました。
なお、設定はパフォーマンス優先としており、BIOS上の共有メモリの設定もデフォルトのままとなっています。
注、またここで掲載されているベンチマークは、特別に記載がない限りBitlockerが有効になっているときのものとなっています。
Cinebench R15
Cinebench R23
まずは時間を10分に設定してCinebench R23のスコアを回すとこんな感じ。
また、時間縛りをなくして、1回だけマルチを回すとこんな感じ。
7940HS搭載の別の端末のレビュー記事やベンチマークサイトを参考にするとだいたい16000~17000程度のスコアが出ています。それと比較すれば若干の性能は劣るもののそれでもとても性能が劣るわけではありません。
また、シングルのスコアはこんな感じ
Cinebench 2024
Cinebench 2024ではエラーが発生し、ベンチマークを動かせませんでした。
ドラクエベンチ
FFXV ベンチマーク エラー発生
基本的な設定で3805で普通とのスコアが出た後にブルスクが発生しました。
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkで、Bitlockerありの状態でテストするとこんな感じ。
SSDの型番が不明ですが、こんな感じになりました。
Geekbench6
Windows+DirectML+Stability Matrix+780MでStable Diffusionをテスト
ROCmや実験条件などの注意書き
まず、ROCmについては現状APUには対応していないらしいです。
ネットをさがせば無理やりROCmを内蔵グラボに適応して回している方もいらっしゃるようですが、筆者個人としては難易度が高そうなので今回は行っておりません。
また、実験についてはできるだけ速度を出せるような引数にしていますが、現時点でより高速に回せる設定があるかもしれませんし、時間が立てばさらに高速に回すための情報が出るかもしれません。
特に2024/02/12時点ではDirectMLはRyzenのNPUには対応していません。もし対応したらより高速に回せる可能性があります。
実験に使用した3つのマシンについて
今回実験に使用したのは以下の3つです。
- GEEKOM A7
- GEEKOM A5
- galleriaのRTX2060搭載ゲーミングノート
スペックはざっくりとこんな感じです。
A7 | A5 | ノート | |
CPU | 7940HS | 5800H | 4800H |
メモリ | 5600 16GB*2 | 3200 16GB*2 | 3200 16GB*2 |
dGPU | RTX2060 6GB | ||
iGPU | Radeon 780M | Radeon RX Vega 8? |
なお、A5はBIOSの設定から内蔵グラボにおけるDDRメモリのVRAMの割当量を16GBに設定していて、さらに8GB共有メモリが割り当てられるため、24GBのメモリを使える計算となっています。
また、GB6のGPUテストはこんな感じ
A7 | A5 | ノート | |
GB6 OpenCL | 34136 | 17745 | 72442 |
GB6 Vulkan | 36682 | 計測エラー | 68590 |
7940HS搭載のGEEKOM A7はRTX2060搭載のノートに比べて半分程度のベンチマーク結果となっていて期待が持てます。
検証内容と結果
共通条件
- ComfyUIで画像生成
- サンプラーはDDIM
- サイズは512×512
- 2GB程度のモデルを使用(モデル名は書きません)
- プロンプトは1語、ネガティブプロンプトは空欄
個別の条件
A7の引数は、「--lowvram --preview-method auto --directml --use-quad-cross-atention --disable-xformers」
A5の引数は、「--preview-method auto --directml --use-quad-cross-atention --disable-xformers」
ゲーミングノートは、「--normalvram --preview-method auto」
としています。
結果
結果は
A7 | A5 | ノート | |
ステップ速度 | 2.18s/it | 3.15s/it | 5.49it/s |
生成時間 | 45.72秒 | 67.27秒 | 4.17秒 |
予想以上に低いスコアとなってしまいました。
最低でも2s/it=0.5it/sは達成してくれるだろうと思っていたのですが僅差で届かず…。
おそらく内蔵GPUに割り当てるメモリを変更できなかったことで性能が底まで向上しなかったのかもしれません。
あとはやっぱりNVIDIA強いなあとざっくりと思いました
設定とかを変更すれば2.07s/it程度はでました。
メリット
メリットはこちら。
本体もACアダプタも小型
GEEKOM A7は非常にコンパクトなミニPCです。
7x40HSを搭載しているというのに112.4 x 112.4 x 37mmという非常にコンパクトなサイズです。
とはいえ、ミニPCの場合はたいていACアダプタが大型になりがちなんですよね。
GEEKOMのIT13の場合は非常に大型です。
そこでIT13とA7の電源アダプタを比較するとこんな感じ
A7がかなりコンパクトになっているのがわかると思います。
ちなみにどちらも19.0V6.32A120Wのアダプタです。
現時点で最強クラスのCPUを搭載
少なくともCPU自体はRyzen9-7940HSを搭載しております。
7940HSはPassmarkで約30500であり、モバイル向けCPUとしてはCPU性能は結構高性能な部類と見て良いと思います。
現時点ではRyzen8000番台やCore Ultraなども出ていますが、それらと比べてもさほど見劣りしないCPU性能を持っているようです。
内蔵GPUやNPUもそこそこ
内蔵GPUはRadeon 780Mです。
現時点で様々な比較がありますが、その比較によってはGTX1650に近いスコアを出している場合もあります。
ローエンドのDGPU並のスコアを出してくれるのは当惑ですね。
また、NPUを搭載しており、AI性能もあります。
ただし、現時点ではあまり対応しているサービス?が多くありません。たとえばDirectmlは現時点でRyzenのAPUに搭載しているNPUは認識していないようです。
とはいえ、今後DirectmlがRyzenのNPUに対応してくれば画像生成などをより快適に楽しめるかもしれません
ちなみにデスクトップ向けの8700Gなどはより強力なGPU性能やNPU性能を持っているようです。
メモリも十分に高速
メモリはDDR5-5600の16GB×2の構成です。
Amazonを見る限りSODDIMでDDR5−5600よりも高速なDDR5メモリは見つかりませんでしたので、SODDIMとしては結構高速だと思います。
冷却能力が高い?
注、室温が13度程度の現時点での評価です。
Cinebench R23のマルチを10分ほど回したところ、5分程度経ってようやくサーマルスロットリングが性能が落ちました。
GEEKOMのIT13の場合はほんの20秒程度でサーマルスロットリングで性能が落ちましたから、それに比べればかなりピーク性能を維持しやすくなりました。
デメリット
分解がしづらくなっている
GEEKOMさんのミニPCといえば分解がし易いメリットが挙げられました。
しかし、ほかのレビュワーさんのレビュー動画を参考にすると、GEEKOM A7のネジはゴム足の裏にあり、ゴム足を外差ないと分解ができません。
その他の情報
7840HSモデルか7940HSモデルか
GEEKOM A7は7840HSモデルと7940HSモデルがあります。
基本的な構成は変わりませんが、7940HSモデルは2TB SSDですが、7840HSモデルは1TB SSDとなっています。
GEEKOM公式サイトでは7940HSモデルが118000円で、7840HSが94000円、価格差は24000円です。
APUの性能としてはCPU性能GPU性能ともに大幅な差はないものの若干7940HSのほうが高性能です。
どちらを選ぶべき?
7840HSモデルのほうがおすすめです。性能差や1TB多いSSD容量を加味しても24000円の価格差はいかんともしがたいです。
また、少なくとも7940HSモデルは高負荷状態が室温15度ぐらいの状況では5分ほど続くとサーマルスロットリングが発生しCPUのマックス性能を出しきれなくなります。
サーマルスロットリングの設定や室温等によっても変わりますが、性能が低いもののTDPも低い7840HSのほうがおすすめかもしれません。
とはいえ、より高性能なモデルや2TBのSSDを求めている場合は
Windows11 Proを搭載。価格は競合に比べると若干割高
GEEKOM A7はWindows11 Proを搭載しています。(OEMライセンスであることを確認済み)
そのためか例えば場合によってはWindows11 Homeも使うM社などに比べて値段が若干高いです。
とはいえ、Home版よりもPro版のほうが機能が多いと言われているので、場合のよってはPro版を選ぶメリットはあります。
BIOSからのVRAMの割当設定がなさそう。
GEEKOM A7はミニPCの内蔵GPUとしては十分に強力なGPU性能があります。
しかしBIOSの設定ではVRAMの割当量を増やす設定がありませんでした。
これでは内蔵GPUのVRAMを増やすにはメモリの容量を増やすしかなさそうです。ちょっと困りました。
あとがき
参考になれば幸いです。
全体的にグッドなミニPCだと思います。
筐体がコンパクトになり、排熱に懸念点がありましたが、予想以上にしっかりと冷却できているようです。
とはいえ、冬場で若干のサーマルスロットリングがあるので、夏場にどうなるのかは気になるところです。